平成29年度 登山居室指導者養成講習 参加報告  平成30年1月17/18日  
第7回登山教室指導者養成講座 参加後記
・2018年2月17日~18日
・長野県小諸市 安藤百福自然体験活動指導者養成センター/水ノ塔山
・参加者 八十嶋仁

 
先日、本部主催のリーダー養成講座に参加させていただきました。
昨今日本山岳会に限らず、登山中の事故が増えていることを鑑み、リーダーを育成しようという目的で開かれているとのことでした。
多摩、関西、四国、東海各支部は複数人の参加。
以前参加したユースの講習会でお会いしたことがある人も多く、和やかな雰囲気でした。
また、岩手や青森など遠方から一人で参加されている会員も見え、石川支部から一人で参加した私としても刺激になりました。

【1日目】
13時に会場入り。この日は座学と懇親会を受講しました。講義の主な内容は、セルフレスキューについてでした。
最初に長野県警山岳救助隊の櫛引知弘隊長から、近年の長野県内における遭難の傾向と対策について伺いました。

以下、要点を。
☆近年の遭難の傾向
 登山者の増加により、遭難件数は全体的に増加。中高年、男性の割合が圧倒的に多い。登山に自信が有る人が遭難しやすい。
 死傷者が出るような事故はあまり増えていない。激増しているのは「道迷いでヘリを呼ぶ人」。
 地図も持っておらず、コースの下調べなどもしていない様な、お粗末な登山者が増えている。
☆遭難の3つの要因・・・地形要因(危険箇所など)、気象要因(吹雪など)、人的要因
 特に人的要因が大きく影響する。
 地形、気象に関しては「気をつけていれば回避できる」危険が多い。
 人的要因=油断、過信、知識不足、技術不足、体力不足、判断ミスなど。
 山岳会に入っていることで、救助要請が遅れることも・・・救助を呼ぶことを「恥」と考え、
 山岳会の中で処理しようとする。結果、救助要請が遅れ、いっそう致命的な遭難となる。
☆遭難時の対応
 ・まず一息つき、冷静になる。
 ・パーティー全体の安全を確保する。
 ・周囲の状況の把握、遭難者の容態確認など、必要な情報を収集。
 ・セルフレスキューの可否を判断する→過信は禁物!無理をすると二次遭難につながる。
 ・セルフレスキュー困難な場合はすぐに通報する。救助隊には情報をできるだけ正確に伝える。
   →救助に必要な情報・・・場所、現地の地形や天候、遭難者の容態。
                  あらかじめ計画書を提出することで通報時間を大幅に短縮できる。
 ★救助はとにかく時間との戦いであり、情報の有無が救助の成否に大きく影響する。
○注意点
 ・携帯電話のバッテリーは温存する。余計な通信はしない。
  家族などへの連絡は後回しにするか、緊急連絡員が担当する。
 ・遭難者や他のパーティーメンバーの安全確保を最優先。
  また保温や補給で体力を維持することも大事。(レスキューシートなどを持っていると良い)
 ・ヘリに合図する際は、発炎筒は案外、発見されにくい。ヘッドライトを点滅させると良い。
 ・ヘリが現場に急行するまで、通報を含めると1時間以上かかることが多い。
  ヘリは暗くなると飛べないため、日没2時間程度前には通報しないと救助不能になる。
 ・霧が出ているとヘリ救助は困難になる。現場の気象状況は通報時に正確に伝える必要有り。

 櫛引隊長の講義の後は、本部遭難対策委員会の川瀬恵一委員長より、計画書提出についての新規定の説明が有りました。
 内容を端的にまとめると、支部会員の個人山行でも本部への計画書提出を徹底せよとのことでした
 (ただ、本部は計画書の内容について口出しはせず、サポートも特にしないとのことでした)。
 この日の最後には重廣恒夫副会長より、支部山行などでの遭難対策を徹底する旨の再確認や、
 これまでの登山経験で培った救助技術のあれこれについて話を聞きました。
【2日目】
 朝8時に宿舎を発ち、浅間山麓にあるスキー場へと移動。かんじきやスノーシューに履き替え、
 標高2202mの水ノ塔山を目指しました。歩行そのものは慣れたもので、気楽についていくことができましたが、
 印象に残ったのは空の色と雪の質感。北陸の鉛色の空とは桁違いの蒼い空、
 湿り気の全く無いさらさらとした雪。これほどの好条件で登れたのは幸運でした。
 ピークを踏んだ後は、30分ほど下り広い鞍部で重廣副会長よりセルフレスキューの手ほどきを受けました。
 パーティー内に負傷者が出てしまったという想定で、負傷者をいかに搬送するかを課題としました。
 まず教わったのは、ザックひとつを使い負傷者を背負う方法です。
 ザックの中身を全部抜き、肩ベルトを緩めて負傷者の足に通し、クッションつきの背負子のようにして使う方法です
 (抜いた荷物は他のパーティーメンバーで分配します)。
 これは非常に手軽にできる方法であり、非常時にはこうした簡単な方法で無いととても活用できないということでした。
 確かに簡単では有りますが、負傷者を背負って下山するのは大変な労力です。
 結局のところ、セルフレスキューを図るには、普段から体力を鍛え上げないといけないということなのかも知れません。
 もうひとつ教わったのは、ザックを連結して担架を作る方法です。
 これも非常に手軽で、中身を抜いたザックを2つ以上用意し、肩ベルトなどを使ってザック同士を結びつけるだけでした。
 ただ、搬送中に手を離しても要救助者が落下しないよう、スリングなどで搬送者とザック担架を固定する必要があるとのことでした。
 また、サイドベルトにストックを通すとさらに搬送しやすいそう。
 今回は非常に短い時間の中でしたが、充実した講習を受けることができました。
 また、他の支部の会員たちとも交流することができ、実りの多い時間でした。
               文・写真 八十嶋 仁 
 


 
 


 
   
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