山行報告 春山登山 毛勝山 2415m  平成28年5月14日/15日  
 毛勝山 西北尾根
 2016年5月14日・15日
 メンバー 八十嶋仁(L)・大庭保夫(SL)・中川博人・樽矢導章

・手ごわい山
 毛勝山は剱岳の北に位置し、登山口からの高低差1700m。
当初の予定では毛勝谷を遡行し1日で山頂を踏んで帰るはずだった。実際大庭さんは昨年このコースで登頂したという。
毛勝谷は奥に行くにつれ急峻になり、ひとたび雪崩や大規模な落石が起これば重大な事故は免れないであろうコースだ。
さらに今年は雪解けの早さからスノーブリッジ崩壊などの危険もあった。
そこで選んだのが西北尾根コース。夏道は最近できたらしい。
これもまた急峻で、稜線上の雪の状態によっては、一筋縄ではいかないことが予想された。

・つらい登りと、ご褒美
 一日目、魚津市の片貝山荘近くの登山口に到着したのは8時ごろ。空は雲に覆われていたが明るく、雨が降るほどではなかった。
このコースの難しいところはまず、尾根までのアプローチが非常に険しいことだ。歩行1時間で400mほどアップする。
はたして、歩き始めてすぐに手を使うような急傾斜になった。全員汗だくになる。
それでも、ツツジやイワウチワ、イワカガミにシャクナゲ、希少種であるシラネアオイなど、春を謳歌する小さい花が目を楽しませてくれた。それにスギの古木、大木。最近まで人の手が入っていなかったコースなだけあり、森の古さと豊さには驚かされる。
 尾根に登り切れば傾斜は緩くなるが、今度は距離が長い。暑い、長い、ガスで見晴らしもない。先輩方は陽気なもので、帰りにどの山菜を持って帰ろうかと品定めしている。朗らかな雰囲気で私も楽に登れた。山男はかくあるべきだと思う。
 標高1300mに差し掛かったころ急激に雲が晴れる。晴れたというより、雲の上に出た。
重たげなガスの向こうに青い空、そして不意に白い雪をかぶった峰が姿を現した。
思わず「嬉しい!」と感嘆の声が出る。それほどの感動。
毛勝山の尾根と並行して走る、僧が岳と越中駒ケ岳の峰だ。辛い思いをしていたからこそ、本当に美しく思えた。
 標高1900m、ようやく登山道が雪におおわれる。午後3時半ごろ、モモアセ池の手前にテントを張る。
当初の幕営予定地より少し下だが、見晴らしが良く風も当たらない。
眼下には夕陽に染まる雲海、遠くには青白くかすむ後立山の山々、目の前に目指す毛勝山がそびえ、これほど贅沢なテント泊は久しぶりだ。酒をたしなみながら鍋をつつき、絶景に思いをはせる。何よりのご褒美である。
毛勝山、今まで良く知らなかったのがもったいないほどいい山だ。

・山頂、剱岳を遥拝す
 天気が良いまま迎えた2日目。気温も思ったより下がらず、雪面は程良く締まっていた。朝6時出発。
 幕営地から山頂までの道のりもまた険しい。痩せ尾根の片側にべったり雪が貼りつき、ところどころ雪庇が落ちた跡がある。
谷底までは極めて見通しがよく、「もし滑落したら一気に下山できるね」などと軽口をたたきあう。
確かに、一度滑ったらどこまでも止まらないであろうことは間違いない。
アイゼンがよく効く雪質の時を見極めて登らなければ、かなり危険だろう。
中川さんが先頭で適切なコース取りをし、この日は幸いにも、大した難もなく進めた。
 険しい登りを乗り越え山頂に着くと、急に視界が開けた。午前9時半到着。
360度のパノラマで、剱岳、後立山の黒い峰に程良く白い雪が乗っている。何より素晴らしいのはやはり剱岳で、北側から見ると小窓やチンネが屹立する姿が、勇ましくも気高い。やはり神の座だ。「また、この山に登りたい」。
剱岳への思いが、ふつふつと高まってくる。
 山頂まで、出合った登山者は延べ8名。ほとんど人の気配がしないところがまたいい山である。
今度は、是非毛勝谷から登りたい。手ごたえがあり、美しくもあり、すべてが素晴らしい山だった。                  
                           文 八十嶋 写真 八十嶋・中川・大庭・樽矢
 
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