個人山行:医王山ラッセル訓練&道迷い報告  (文・写真 八十嶋 写真 堀)  
   期日 2017年1月15日 
 天候 曇り時々雪
 コース 見上峠~医王の里~西尾平~白はげ山~夕霧峠~見上峠
 参加者 樽矢、堀、八十嶋  会員外参加:Kさん(20代女性)
 
  ・例年になく少ない雪
 個人的には年明けに医王山に行き、足慣らしにラッセル訓練をするのは毎年恒例の行事だ。
 会員3名と、最近知り合った将来有望な山ガールのKさんとともに挑んだ。
 今シーズンは異様に雪が少ないが、おりしも今年最大といわれる寒波が数日前から到来しており、ようやくまともに雪が降った直後に実施することができた。
 雪が深ければ見上峠からずっと尾根通しで歩いていくつもりだったが、この日の雪はなんとも少なく、藪が出ているため登山道を避けて林道を行くことに。
 山屋としてちょっと恥ずかしい。林道は先行パーティーのトレースでしっかりと雪が固められていてかんじきを履く必要すらなかった

 しがらくびからかんじきを履いて登山道に入ったが、積雪はせいぜい1メートルといったところで、例年なら影も形も見えないような低木が露出している。
 白はげ山頂上の展望台・方位盤は、例年ならまるまる雪に埋まっているはずが今年は完全に顔を出していた。例年より深さにして3メートルは積雪が少ないのではないか。温暖化の影響だろうか?地球が心配になる。
 
・まさかの道迷い!
 時間に余裕があったため、白はげ山から夕霧峠まで通すことに。先行パーティーは白はげ山で昼食を取る様子だったので、今度はわれわれが先行することに。トレースは全くなく、これでようやく新雪ラッセルが楽しめる。
 雪は膝上ほどまでで、それほど足をとられない。やわらかい新雪を踏みしめて歩くのは、ちょうどいい運動だった。ただ厄介なのは藪。雪が少なすぎて藪が全く隠れていない。中途半端に雪をかぶり、頭を垂れて夏道を覆っている。上はやぶこぎ、下はラッセル、めちゃくちゃ歩きにくい。
 雪山のセオリーとして尾根筋を歩きたいところではあるが、このあたりは夏道も尾根を巻いているため、尾根は完全に藪。とても歩けたものではない。歩きやすいところを探しながら、夏道に入ったり、外れたり。かなり時間を食った。それでも、尾根筋に沿ってトラバースしているのは間違いないし、所々に道標があり、迷ってはいないことが分かった。
 問題が起きたのは、「蛇尾山は→」と書かれた道標を越えたところ。地形図では「医王山」と表記しているちょうど真下の辺りだ。
夏道は尾根に沿って巻きながら南下している。
蛇尾山のピークから夕霧峠に向かうためには、もうひとつ小ピークを越えなければならない、というのはあらかじめ地図で確認していた。しかし、ガスと濃い藪で全く視界が利かない中、蛇尾山~小ピーク間の鞍部をいつの間にか見過ごして、余計に尾根を巻いてしまっていた(この時点では、全くそのことに気づいていなかった。)
 気がつくと、どこを探しても歩けそうなところが無い。完全に藪に囲まれていた。
こういう時、うかつに谷側におりるととんでもない所に出る。
いったん、尾根に突き上げた。そして出た場所は、蛇尾山の山頂。
これで何とか、目処はついた・・・と思ったのが甘かった。このとき、コンパスで方位を確認しなかったのが痛恨のミスだった。
 小ピークがあると思われる方向に歩いていく。5メートル先も見えない藪の中を、身をよじるようにして進む。すると、前方に、先行パーティのものと思われるトレースが。ふう、これで一安心。
 「やっぱり人の歩いた跡は歩きやすいぜ!」などとのんきなことを言いながらトレースをたどっていくと、なんと!前から、先ほど白はげ山で分かれたはずのパーティーがやってきた。「あれ?どちらに?」「いや、夕霧峠に。」「え?夕霧峠に行くはずなのになぜ我々とぶつかるんですか?」「???」ここまできてようやく気がついた。
我々がたどってきたのは、先行パーティーがつけたトレースではない!自分たちがつけたトレースを、逆戻りしていたのだ!あのときの私たちは間違いなく最高に間抜けだった。

・コンパスさんごめんなさい
 どうやら、蛇尾山から南側の小ピークに降りるつもりが、蛇尾山の北側に降りてしまったようだ。
そもそも尾根を巻きすぎていた私たちは、「尾根を右手に見ている=南側に向かっている」はずが、「尾根を巻きすぎて北に向かって歩いている」状態だった。蛇尾山を越えてまっすぐ歩いていけば南にいくと思い込んでいたが、どっこい南北反対だった。
地図の神様がその場にいたら往復ビンタで粛清されるところだ。
 あわてて、先輩たちと顔を寄せ合い、コンパスと地形図を取り出してにらめっこする。
この時点でようやく「自分たちがなぜ迷ったか」はっきりと分かった。
そこからは、少し歩いてはコンパスで自分たちが南進していることを確認、迷った地点に近付いたらまた地図とコンパスを出して行き先を確認。すると、あっさり南の小ピークへ続く鞍部を発見する。
「もっと早くこうすればよかったね。ごめんね、コンパスさん」と心の中で謝る。

・夕霧峠ははるか遠く・・・
 南の小ピークへたどり着くと、後ろからもうひとつのパーティーが着いてきていた。
私たちが地図とコンパスを出しておっかなびっくり藪こぎをしていると、後ろのパーティーから「その辺の藪が薄いところを歩けばよい」などと檄が飛ぶ。
どうやらかなり呆れられたかも知れない。
のろのろしてしまいすみませんと道を譲ると、なにやら向こうのパーティーは豪快に谷底へ降りていく。方角は西。夕霧峠の方向と90度ずれている。
 この時点で、我々は小声で協議。
 「どうする?明らかに方角が違う」
 「まあ、少し歩いたらトラバースして夕霧に向かうのでは?」
 「一応後ろを歩かせてもらうか・・・」
    ということになったが、どうやら向こうは、夕霧峠に向かわず西側の林道に直接下りる腹積もりだったようだ。
林道が見えるところまで行ったところで、はす向かいの奥医王山の位置から、かなり夕霧峠が遠いと分かる。
なんてこったい。先に聞けばよかった・・・。
 林道に下りるのはいいが、現在地と林道の間に10メートルほどの崖があり、ケガのリスクがないでもない・・・。
いっぽう、尾根まで戻るとしたら何十メートルか標高を稼ぎなおさなければならない・・・。今日何度目かの苦悩。
メンバーは疲れた表情。それでも、安全な道を選んだ。向こうのパーティーにつつましく申し上げる。
 「すみません、僕らは上に戻ります・・・」。
 小ピークまで15分ほどかけてえっちらおっちら戻り、南に向け藪こぎ再開。するとどうだ、数分もせぬうちに夕霧峠の小屋が見えた。「見えたぜ、やったぜ!」思わず叫んだ。もう何十回も来た医王山で、こんな気持ちになるのは初めてだ。どんなときでも、山と真剣に向き合わなければ痛い目を見ると再確認した。
 最終的には、8時ごろ登り始めて、15時ごろ下山の7時間行動。ふがいない山行になってしまったが、文句ひとつ言わずに導いてくださった先輩方と、「意外と楽しかったですよ」と暖かい慰めの言葉を下さったKさんには深く感謝したい。

 教訓:雪が中途半端に少ないのはやっぱり危ない。
    コンパス・地図とは仲良くしよう。
    よそはよそ、うちはうち。
    どんな山でもなめたらアカン!

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