春山山行 遠見尾根   平成27年4月12日 中川博人支部長  
   
   4月8日、春山山行予定地、富山100山「細蔵山」の渡渉する箇所が気になり、Yさんと偵察に馬場島へ向かった。
3月の気温が低かったので折戸集落あたりからは残雪も多くまだ春浅し、県道も昨夜からの霙がシャーベット状態であった。
伊折橋を渡るとき「アー、こりゃダメだ」と思った。早月川の水量が昨年とまるで違う。
猫又山から剣岳、更に大日岳、早乙女岳に囲まれる分水嶺の雪解けの水は全てここに集まる。
ここへきて急激な融雪が山では始まっているようだ。青少年研修センター前のゲート付近に車を止め、一応渡渉点まで様子を見に行く。気温が下がり降雪となった道を約30分程歩く。我々二人の他は人の気配もなく、二人の足音だけが響く。

渡渉点・・予想通り激流であった。昨年4月12日に来たときは、流れは穏やかだったので何とか飛び石で渡れたが、これでは仕方がない、秋の渇水期に再度トライしよう。

帰路、富山県警山岳警備隊のランクルが通過。馬場島の警備詰所の点検に来たのだろうか。

 4月12日。山を変更し、参加メンバーも3名になってしまったが、目的地を白馬五竜の遠見尾根に転進し新人2名と登った。
新人の雪上歩行には理想的なコース。晴天のもと標高1500mまでテレキャビンが一気に運んでくれる。
アルプス平駅に降りるとさすがに空気がピンと冷たい。

 雪は比較的よく締まり、ツボ足で歩きだす。
先行パーティーはアイゼンを付けている人もいたが、なぜこんなところでと首をかしげる。10分ほどで地蔵の頭。
立派なケルンに昭和30年代に遭難した方々のレリーフが埋められ、そのそばでお地蔵様に守られている。
一旦下り気味から登り返しになり漸く山らしい傾斜になって、汗をかくので早々にジャケットを脱ぐ。
1時間10分で一ノ背髪に到着。目の前には遠見尾根越しに五竜岳が堂々たる存在感である。
雪形に囲まれた武田菱の岩壁が黒々と浮かび上がり、鎧を纏った傭兵のごとく力強い。
更に急な尾根筋をもうひと頑張りで二ノ背髪。景色に見とれて雪庇に近づかない様に気を付けよう。
11時40分小遠見山(2007m)に到着。ここからは絶景が広がる。目の前に敢然と聳える五竜岳(2814m)。
更に南へ目をやると鹿島槍ヶ岳の北峰が均整のとれた三角形の山容をみせ、カクネ里に落ちる北壁が何とも美しい。
北壁から削ぎ落ちた雪は、カクネ里に幾筋もの雪崩跡をつけて、デブリの山となっていた。
目を北西に向けると、八方尾根の向こうに、白馬三山が美しいスカイラインを見せてくれる。
北東に目を転ずれば、雨飾山、焼山、火打の頸城山群と妙高山の外輪。更に高妻山、戸隠連邦、飯縄山、遠く浅間山まで感動の大パノラマである。コーヒーを飲みながら至福の時が流れた。

 
   
 
 
   昼食を済ませ、中遠見山(2037mまで足を延ばす。小遠見山までの雪庇は稜線の東側に張り出していたが、こちらは北側に出ている。
雪を飛ばす風が尾根ひとつ越えると狂ったように風向きを変えて新たな雪庇を作り出す情景が頭に浮かんでくる。
部分的にかなりヤセた雪稜が出てきた。右側は一気に谷底まで落ちている。ゆっくり慎重に登り中遠見山山頂へ。
空は高層雲が幕を張ったように覆われてきたので、ここから下山し途中で滑落停止訓練をすることにした。
眼前の鹿島槍ヶ岳、雄大なカクネ里の谷が一気に北壁に突き上げている。
平家の落ち武者が身をひそめた「隠れ里」が「カクネ里」に転訛されたと書物で読んだことがある。
美しいU字谷が紅葉に染まるころ、カメラを持ってまた来ようと思いながら下山した。 (文:写真 中川博人)
   
 
     
   
   
   
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